SAP GUI for Windows をインストールしたままの状態で使うと、実は非常に使いにくい。なぜなら、SAPシステムはドイツ生まれであり、初期設定の多くは欧米向けに最適化されているからだ。
この記事で紹介する設定を全て行えば、SAP GUI の使い勝手が数倍アップし、利用時のストレスが軽減され、生産性向上すること間違いなしだ。
なお、この記事に登場するスクリーンショットは、SAP GUI for Windows 8.00 のものである。
SAP GUI のオプション画面の呼び出し方
まず初めに、SAP GUI for Windows の「オプション」画面の呼び出し方を説明しておこう。この記事で紹介する設定の多くは、SAP GUI for Windows のオプション画面から行うためである。
SAP GUI for Windows のオプションを呼び出すには、SAP Logon (SAP Logon Pad)を起動し、ウィンドウの左上にある三本線をクリックする。
メニューが表示されるので、「オプション」を選択する。
SAP GUI をインストールしたら必ずやるべき設定5選
その1:マルチモニターのためのビジュアルデザインを選ぶ
SAP GUI for Windowsは大昔からあるので、古からあるビジュアルデザイン・テーマを選択していると、ディスプレイを2台以上接続しているマルチモニター環境で正しく表示されない場合がある。マルチモニター環境なら、最近のビジュアルデザインを選ぼう。
SAP GUI for Windows のオプション「ビジュアルデザイン」の「テーマ選択」を “Belize” 以降にする。
“Belize” 以降とは、”Belize“または “Quartz“のことである。
Belize以降を推奨する理由は、マルチモニターに対応したビジュアルテーマだからである(SAP Note #2541592 「高い DPI 設定で SAP GUI for Windows を使用する際の表示の問題」より)。
近年、ノートPCに外付けディスプレイを接続し、マルチモニター環境で利用しているユーザは多いと思う。左記のNoteによれば、Belizeよりも旧いテーマを使用した場合、マルチモニター環境で正常に表示されないケースがあるとのこと。
古参のSAPコンサルタントほど、昔からあるテーマ “SAP Signature” を使いたがるが、マルチモニターでは表示がくずれるので、やめておいた方がよい。
また、Belize以降のビジュアルテーマは Fiori のUIに準じているので、Fioriを指向するなら、Belize以降を使った方が表示の互換性を得やすい。
ちなみに、Belizeは SAP GUI for Windows 7.50 からで、2016年に S/4HANA, Fiori とともに登場。Quartz はSAP GUI for Windows 7.70 からで、2019年に登場。
その2:ドロップダウンリストの表示を整える
デフォルトでは、ドロップダウンリストに表示される値は、キー値が表示されない。並びも順不同。以下の設定を行うと、キー値が表示され、キー値でソート(並べ替え)が行われるようになる。
SAP GUI for Windows のオプション「インターアクションデザイン」の「ビジュアル化1」より、次の二つのチェックボックスをONにする。
- 「ドロップダウンリスト内にキーを表示」
- 「キーボード入力効率化のためにドロップダウンリスト内のキーでソート」
この設定は、ドロップダウンリストの値一覧で、アルファベットのキー表示と、そのアルファベットによるソート(並べ替え)を実行する。
次の例を見てもらうのが解りやすいだろう。左が設定前(キー表示無し、ソート無し)、右が設定後(キー表示有り、ソート有り)である(クリックすると拡大される)。
キー表示なし、ソートなし
キー表示あり、ソートあり設定あり
その3:数値項目で全角文字の入力を防ぐ
数値入力エリアで、半角英数字しか入力させないようにするための設定。
SAP GUI for Windows のオプション「多言語設定」の「IME」より、次の二つのチェックボックスをONにする。
- 「数値項目または右寄せ項目の上」
- 「1バイト項目上」
この設定は、入力項目が数値型の時、誤って全角文字で入力されてしまうのを防ぐ。
数値型の入力項目にカーソルが遷移すると、IME(日本語入力機能)が強制的にOFFにされ、半角英数字しか入力できないようになるのだ。
その4:SAPメニューにトランザクションコードを表示させる
SAP GUIのメニューは、デフォルトではトランザクションコードは表示されない。SAP GUIのメニューにトランザクションコードを常時表示するには、以下の設定を行う。
SAP GUIのメニュー「補足」→「設定」より、「技術名称表示」にチェックを入れる。
ここでいう技術名称とは、トランザクションコードのことである。技術名称表示を有効にしておくと、SAPメニューにトランザクションコード(T-CODE)が表示されるようになる。
次の例は、左が技術名称表示無し、右が技術名称表示有りである(クリックすると拡大される)。
技術名称表示無し
技術名称表示有り
トランザクションコードを知っていれば、プログラムの起動はSAP GUI のメニューパスからではなく、コマンドフィールドに直接T-CODEを打ち込んで起動できる。要するに、トランザクション起動の時短になる。
その5:数値と日付のデフォルト書式を変更する
SAPシステムはドイツ生まれ。したがって、数値と日付の書式のデフォルトは「ヨーロッパ式」。つまり、数値の小数点は、ピリオドではなくカンマ。桁を区切る文字は、カンマではなくピリオドなのだ。
たとえば、日本式(アメリカ式)で「1,234.56」と表される数値は、ヨーロッパ式では「1.234,56」となる(カンマとピリオドが逆)。
小学生の頃から「小数点はピリオド」を常識として育ってきた筆者にとって、このヨーロッパ式を初めて見たときは、まさにカルチャーショックだった。
しかし、日本国内でSAPシステムを使うなら、表記は日本式に設定しておきたい。
SAP GUI のメニュー「システム」→「ユーザプロファイル」→「ユーザデータ」を開き、「デフォルト」タブに移動し、
- 「10進表記」を「1,234,567.89」
- 「日付書式」を「YYYY/MM/DD(グレゴリオ暦日付)」
に変更する。
この設定をヨーロッパ式のままにしていた場合、日本人にとって数値が見辛いだけでなく、日本式の書式で数値を入力するとエラーになってしまう。日付も然りだ。
無論、利用する環境がアメリカや、ヨーロッパの場合は、日本式書式だと逆にエラーになってしまう。したがって、利用する国の書式に合わせて、デフォルトの書式を設定する(厳密には、Windowsコントロールパネルの「地域」の設定に合わせる)。
なお、T-CODE: SU3 でも、上記と同じ「ユーザデータ」の設定画面を開くことができる。
ユーザデフォルトの設定は、サーバ側で一括で行える。
サーバ側で設定済みの場合は、この書式の設定は不要。
まとめ:SAP GUI をインストールしたら設定を変えて使いやすく
S/4HANAの登場以来、Fiori の導入が推進されているが、 SAP GUI もまだまだ現役だ。したがって、SAP GUI を使いやすくする工夫は、SAPシステムを使いやすくする工夫にほかならない。
この記事で紹介した 5つの設定は、SAP GUI for Windows をインストールしたら、最初に必ずやっておくことをおすすめする。設定しておけば、SAP GUI が確実に使いやすくなるはずだ。
コメント