SAP Fioriアプリは通常、Fioriラウンチパッドからアクセスする。しかし、目当てのアプリを探すのに時間がかかったり、頻繁に使用するアプリを直接開けないなど、不便に感じる場合がある。特にSAP GUIのように、トランザクションコードを入力してアプリを直接起動する仕組みがないため、Fioriアプリの利用を煩雑に感じるユーザーも多いのではないだろうか?
本記事では、FioriアプリをURL指定で直接起動する方法を紹介する。この方法を利用すれば、Fioriラウンチパッドを介さずにアプリを瞬時に起動できるだけでなく、そのURLをブックマークしておけば、さらなる時短が可能だ。
Fioriアプリを開くのが、どうも億劫だという人には、本記事で紹介する方法をおすすめしたい。Fioriアプリを、SAP GUIと同じように「すぐに開く」アプリにすることが可能だ。
Fioriアプリの起動は面倒!?
SAP GUIに慣れているユーザーにとって、Fioriアプリの起動は面倒に感じることが多いようだ。筆者もその一人である。不便に感じてしまう理由を明らかにするため、SAP GUIとFioriのアプリケーションの起動方法を比較してみよう。
SAP GUIアプリの起動方法
SAP GUIは、従来のSAPシステムユーザーにとって馴染み深いインターフェースだ。
SAP GUIのアプリを起動するには、「SAPメニュー」から目当てのアプリを選択して起動する方法と、コマンドフィールドから「トランザクションコード(T-Code)」を入力して起動する方法の二通りがある。
後者は、トランザクションコードを直接入力するだけでアプリを即時起動できるので、SAPメニューを探し回る手間が省けて時短になる。品目マスタ登録なら「MM01」、受注伝票登録なら「VA01」と、SAPシステムに慣れているユーザーは、トランザクションコードをそらんじながらアプリを日々利用している。SAP GUIを使っているユーザーにとって、デフォルトのアプリ起動方法と言っても過言ではない。

Fioriアプリの起動方法
SAP GUIはデスクトップアプリケーションであるが、Fioriアプリは主にWebブラウザを通じて利用されるWebアプリケーションである。
Fioriアプリを起動するには、Webブラウザより、以下の手順を踏む。
- Fioriラウンチパッドにアクセス
Fioriアプリの入口となる「Fioriラウンチパッド」にログインする。Fioriラウンチパッドはシステム管理者から連絡されるURLからアクセスできる。 - アプリを検索
Fioriラウンチパッド上では、画面に表示されるタイル(アイコン)から目的のアプリを選択する。タイルが多い場合は、検索バーを使って探すこともできる。SAP GUIには検索バーのようなアプリを検索するUIは存在しないので、この点はFioriが優れていると言える。 - アプリをクリックして起動
タイルをクリックすると、Fioriアプリが開く。これでFioriアプリが利用可能になる。
SAP GUIにできることがFioriではできない
SAP GUIでは、「トランザクションコード(T-Code)」をコマンドフィールドに入力すればアプリを直接起動できる。一方、Fioriには「Fiori ID」というT-Codeに似たIDは割り当てられているものの、Fiori IDを指定してアプリを直接起動する方法が存在しない。
要するに、Fioriではタイルからアプリを選択するという手間が避けられない。この手間が、SAP GUIに慣れている従来のSAPユーザーにとって、Fioriアプリを不便に感じてしまう最も大きな要因であると言えるだろう。
しかし、逆に考えれば、FioriでもSAP GUIのようにT-Codeを指定してアプリを起動できる仕組みさえあれば、この不便さは解消されるはずだ。
では、Fiori IDを活かしたアプリの起動方法について詳しく紹介していこう。
FioriアプリのFiori IDを調べる方法
Fiori IDを取得する
SAP GUI のT-Codeに相当するFioriアプリの識別子は「Fiori ID」(App ID)である。このFiori IDをキーにしてFioriアプリの情報を入手することができる。したがって、まずは目当てのFioriアプリのFiori IDを取得しよう。その代表的な方法には以下の二つがある。
1. トランザクションコードからFiori IDを検索する
既知のトランザクションコードから、それに相当するFiori IDを検索するには、SAP Fiori Apps Reference Library を利用する。
SAP Fiori Apps Reference Library は、Fioriアプリに関する詳細情報を提供するSAP社の公式Webサイトである。トランザクションコードに相当するFiori IDを取得するには、SAP Fiori Apps Reference Libraryを次のように操作する。
- SAP Fiori Apps Reference Libraryにアクセスする。
- 画面左上より「All apps」を選択する。

- 検索ボックスにT-Code(下の例では「CS01」)を入力して検索する。

- 検索結果に表示される「App ID」がFiori IDである。

上の方法のように、Fiori IDを毎回探すのは効率が悪いので、Fioriアプリの一覧表をあらかじめダウンロードしておくのがおすすめだ。SAP Fiori Apps Reference Library からFioriアプリの一覧リストを、たったの7クリックでダウンロードする方法を紹介した記事は以下。

2. 実行中のFioriアプリのFiori IDを調べる
Webブラウザで実行中のFioriアプリから、Fiori IDを調べることができる。
- 画面右上にあるユーザプロファイルのアイコンをクリック。

- メニューから「製品情報」をクリック。

- アプリケーションの情報が表示される。「ID」欄の値がFiori ID。

Fiori IDから起動用のURLを作成する
FioriアプリのURL構文
Fiori IDを入手できても、それをそのまま起動用のURLに指定することはできない。
SAP FioriアプリのURLは、以下のような構文となっている。
https://<FioriランチパッドのベースURL>#<Semantic Object>-<Semantic Action>
つまり、URL構文の中でFioriアプリを特定する値は、Fiori IDではなく
- Semantic Object
- Semantic Action
の2つということだ。
FioriアプリをURL指定で起動するためには、Fioriアプリに割り当てられている Semantic Object と Semantic Action の値を入手しなければならない。これらの値は、SAP Fiori Apps Reference Library を使って調べることができる。

FioriアプリのURL起動に必要なのは、
Semantic Object と Semantic Action の二つの値だ!
Semantic Object と Semantic Action を調べる方法
SAP Fiori Apps Reference Library を使ってFioriアプリの Semantic Object と Semantic Action を調べるには、次のように操作する。
- SAP Fiori Apps Reference Library をFiori IDで検索する。
- 検索結果より、「IMPLEMENTATION INFORMAION」タブに移動し、「Configuration」を開く。


- 下へスクロールして「Target Mapping(s)」を見つける。その下に、Semantic Object と Semantic Action があるので、それぞれの値を読み取る。


なお、Fiori IDが判明している場合、次のようにURLを指定し、SAP Fiori Apps Reference Library のFioriアプリ情報に直接アクセスできる。
https://fioriappslibrary.hana.ondemand.com/sap/fix/externalViewer/?appId=Fiori ID
URL構文を作成してFioriアプリを起動する
Semantic Object と Semantic Action の値を取得できたら、上述のURL構文に当てはめてアプリ起動用のURLを作成する。
たとえば、Fiori IDが F1813 (部品表/配合表の更新)の場合、Semantic Object と Semantic Action の値はそれぞれ MaterialBOM, maintenance なので、URLは次のようになる。
https://FioriランチパッドのベースURL#MaterialBOM-maintenance
(Semantic Object と Semantic Action の間はハイフンを入れる)
このURLをWebブラウザのアドレスバーにコピペして[Enter]とすれば、Fioriアプリを起動できる。



【注意】SAPシステムにログオンしていないと、ブックマークからのアプリ起動はアクセスエラーとなってしまう。
Fioriランチパッドへのログオンは済ませておこう!
Fioriアプリをブックマークする時の注意
起動中のFioriアプリはブックマークとして保存が可能だ。ただし、アプリ起動中のURLをそのままブックマークに保存した場合、後からそのブックマークを開こうとすると、
「開いていたアプリそのままのブックマークなのに、起動できない!!」
となってしまうことが多い。
使えるブックマークとして保存するには、URLに少し手を加えてやる必要がある。
たとえば、起動中のFioriアプリのURLが次のような場合、「&」以降の文字列は削除してから、ブックマークとして保存する。
「&]以降の文字列は、Fioriアプリを動かすための「パラメータ」なのだ。Fioriアプリそのものを表すのは「&]の手前まで。上の例では、Fioriアプリそのものは「ManufacturingOrderOperation-manage」なので、それより後の文字列は削除しても問題ない。上の例の場合、有効なブックマークとしてのURLは次のようになる。
https://192.168.XXX.XXX#ManufacturingOrderOperation-manage



実行中のFioriアプリをそのままブックマークしても使えない
余計な部分を削除してからブックマークしよう!
まとめ
SAP FioriアプリをURLを指定して直接開く方法を紹介した。Fioriラウンチパッドを介さず、直接Fioriアプリを起動できるこの方法は、Fioriアプリを素早く起動したいSAPユーザーにとって非常に有用である。また、Fioriアプリを起動するURLをブックマークしておけば、頻繁に使用するアプリへのアクセスがさらに簡単になる。ぜひ、この記事で紹介した方法を実践し、Fioriアプリ利用の効率を高めてほしい。
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