SAP S/4HANAの導入プロジェクトでは、最適なソリューションを検討するために、プロジェクトメンバー間でブレインストーミング(ブレスト)などのミーティングを行うことが多い。この際、アイデアを生み出し、整理するツールとして、マインドマップが有効である。しかし、マインドマップを一から作成するのは難しく、アイデアが出てこなければマインドマップも作れないという課題がある。そんな中、マインドマップを自動生成してくれるAIサービスが登場した。それが「GitMind」である。
マインドマップとは
マインドマップとは、英国の教育者トニー・ブザンによって提唱された思考整理の手法である。中心にテーマやトピックを置き、そこから関連するアイデアを線でつなげて放射状に展開していく。この形式により、情報やアイデアを視覚的に整理できる。
マインドマップを使うと、以下のような効果が期待できる。
- アイデアを引き出す
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思考の流れを遮ることなく、自由に発想を広げることが可能。
- 情報を整理する
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複雑なアイデアをネットワークで表し、全体像を把握しやすくする。
- 記憶力を向上させる
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色や形、構造を使うため、視覚的な記憶にも残りやすい。
マインドマップは、個人の思考整理だけでなく、チームでのアイデア共有やプレゼンテーション、教育現場でも活用されている。
マインドマップは描き慣れていないと、議論が上手く進まないかも。
とっかかりになる部分を、代わりに描いてもらえれば・・・
SAPシステム導入プロジェクトでマインドマップが使える場面
マインドマップ活用方法と効果
SAP S/4HANAの導入プロジェクトにおいては、マインドマップを活用してアイデア整理を促進することが可能だ。
たとえば、次のような場面では、プロジェクトメンバー間でミーティングを行い、アイデアの抽出や整理を行う。そのようなとき、マインドマップを活用すればミーティングは活性化し、効率的に進めることが可能になる。
- 要件定義の整理
顧客の業務要件・機能要件をマインドマップに整理し、重要度や依存関係を視覚化する。 - ソリューション検討
複数のソリューションのメリットやデメリットを多角的に整理し、比較検討が容易になる。 - 問題解決とリスク分析
問題やリスクの原因と影響を整理し、優先順位付けと最適な対応策の選定が迅速に行える。 - ユーザトレーニングの計画
新システムの導入時に必要な教育内容を階層的に整理し、優先度を決定する。
業務プロセスごとの要件や課題を整理し、視覚的に全体像を把握できる。これにより、抜け漏れ防止と認識の統一が可能になる。
活用方法
- 顧客や関係者からの要件を整理し、全体像を視覚的に捉えるのに有効である。主要なビジネスプロセス(例:販売、購買、在庫管理など)を中心に据え、関連する要件や課題を分岐として展開する。
- 各要件に対して、優先度、影響範囲、現在の課題などの補足情報を付加していくことで、全員が同じ理解を共有できる。
効果
- 複雑な要件を構造化し、重要事項を一目で把握できる。
- 視覚的であるため、抜け漏れの防止につながる。
- ミーティング中にリアルタイムで追加や修正を行い、参加者の意見を即座に反映可能。
ソリューションの特性やメリット、デメリットを多角的に整理し、比較検討が容易になる。チーム全体で情報を共有し、合意形成を迅速に進められる。
活用方法
- 各課題や要件を中心に据え、その周囲に考えられるソリューションを分岐させて展開する。
- ソリューションごとにメリット・デメリット、リスク、導入コストなどの情報を追加して比較検討の基盤とする。
- 技術チーム、業務チーム、ステークホルダーからのフィードバックをその場でマップに組み込む。
効果
- 各ソリューションの選択肢が一目で比較でき、意思決定が迅速になる。
- 検討漏れを防ぎ、関係者間の認識のずれを最小化。
- チーム全員が議論に参加しやすくなるため、創造的なアイデアが出やすい。
問題やリスクの原因と影響を整理し、解決策やリスク軽減策を視覚化することで、優先順位付けと最適な対応策の選定が迅速に行える。
活用方法
- 中心に現在の問題やリスクを記載し、原因や影響範囲、関連するプロセスを枝として展開する。
- 解決策の候補やリスク軽減策を追加し、それぞれの実行可能性や影響を整理する。
効果
- 各解決策の利点と欠点を比較し、最適なアプローチを迅速に選択できる。
- ソリューションの特性やメリット、デメリットを多角的に整理し、比較検討が容易になる。チーム全体で情報を共有し、合意形成を迅速に進められる。
- 問題やリスクの全体像が把握でき、優先順位をつけやすくなる。
トレーニング計画を視覚的に整理し、対象ユーザやスケジュールを効率よく管理できる。全体像を共有しやすく、計画の精度向上が期待できる。
活用方法
- トレーニングの対象者を中心に据え、必要なトピックやスキルを分岐として展開する。
- 各トピックに対して、トレーニング方法(例:ハンズオン、動画、マニュアルなど)、担当者、スケジュールを補足として追加。
- 必要に応じて、進捗状況やフィードバックポイントも追記可能。
効果
- トレーニング内容が体系的に整理され、効率的な計画立案が可能。
- スケジュールやリソースの調整が容易になる。
- トレーニングギャップ(不足している部分)の特定と対策が早期に行える。
これらの場面でマインドマップを活用することで、視覚的な整理が可能となり、意思決定や効率的な作業進行が実現できる。各場面において、GitMindなどのツールを使用すると、作業効率がさらに向上するだろう。
マインドマップの作り方
マインドマップ作成の基本ステップ
マインドマップの作成の基本ステップは、次の四段階だ。
用紙やキャンバスの中央にテーマとなるトピックを書く。この際、細かい説明は書かずに、単語や簡潔なフレーズにすることが重要。
中心のテーマから、関連するキーワードやアイデアを放射状に書いて伸ばしていく。色分けをすると、視覚的に整理しやすくなる。
主な枝から、さらに詳細を展開することで、全体を体系的に構造化する。
具体例を上げるなど、細分化してアクションに繋がるようにする。
マインドマップ作成における課題
マインドマップそのものは議論を活性化させる有用なツールだが、実際に作成するときは、以下のような問題にぶち当たる。
- 書き辛い
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紙やキャンバスはサイズに制限がある。アイデアを放射状に書いていくマインドマップの場合、書き進めていくうちに、書く場所が無くなってしまうことがある。かといって、最初から用紙のサイズやレイアウトを気にして書くようだと、アイデア出しに集中できず、マインドマップ本来の目的を損なってしまう。
- 発想の停滞
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アイデアが出ないと、マインドマップそのものが進行しなくなる。
- チームでの共有が難しい
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手書きのマインドマップは、資料として残し難く、他のメンバーとアイデアを共有しにくい。
これらの問題を解決するために登場したのが、AI技術を利用したツール「GitMind」である。
GitMindとは
GitMindは、AIを活用してマインドマップやフローチャートを自動生成するオンラインツールである。初心者でも簡単に使える直感的なインターフェースを持ち、思考整理やアイデア共有を強力にサポートする。
GitMindが支持される理由は以下の通りだ。
- 無料で利用可能: 一部の高機能を除き、基本的な機能は完全無料で使用できる。
- 多彩なテンプレート: マインドマップ以外にも、組織図やプロセスマップなど、さまざまなビジュアル形式を選択可能。
- 多言語対応: 世界中のユーザーに対応できるよう、多言語での操作がサポートされている。
GitMindの使い方は非常に簡単であり、数回のクリックでカスタマイズ可能なマインドマップを作成できる。
GitMindの特長
GitMindの際立った特長は以下の点である。
1. AIによるマインドマップの自動生成
ユーザーがキーワードや簡単なプロンプトを入力するだけで、AIが関連性を考慮したマインドマップを自動生成してくれる。この機能により、アイデアが出にくい場面でも、視覚的なヒントを得られる。
2. 共同編集機能
GitMindでは、マインドマップをチームメンバーとリアルタイムで共同編集可能だ。これにより、ブレインストーミングの場面で効率的にアイデアをまとめることができる。さらに、オンライン環境を利用するため、リモートチームでも活用しやすい。
3. 柔軟なエクスポートオプション
作成したマインドマップは、PDF、画像、またはOffice形式(Word、Excel、PowerPoint)でエクスポートできる。これにより、さまざまな用途で資料を活用可能である(無料版の場合、解像度などの制限あり)。
GitMindを実際に使ってみた
業務分析のポイントをマインドマップで整理
実際にGitMindを使ってマインドマップを作成してみた例を紹介しよう。
現在、ある製造業の顧客向けにS/4HANA導入プロジェクトが進行している状況を想定する。
このプロジェクトでは、顧客のビジネスに最適な生産方式、原価計算方式、BOM(部品表)、および作業手順を分析する必要がある。これから、その分析に向けた重要なポイントを洗い出すためのブレインストーミングを実施する場面を想定し、その際にマインドマップを作成することとする。
マインドマップを生成するプロンプト
GitMindに送信するプロンプトとして以下を用意した。凝ったプロンプトではないが、GitMindはこの程度のプロンプトでマインドマップを作成してくれるはずだ。
SAP S/4HANAを製造業の顧客に導入しようとしています。 顧客にとって最適なSAPソリューションを提案するため、顧客の業務における、以下の分析を多角的に行うための、ヒヤリングや分析のポイントをディスカッションしたいです。 -生産方式 -原価計算方式 -BOMや作業手順の完成度と粒度
GitMindでマインドマップを生成するまでの操作方法
以下は、GitMindでマインドマップを生成するまでの手順である。
「GItMind AI」より「AI生成」を選択する。この「AI生成」がマインドマップを作成するAIである。
プロンプトを入力するウィンドウが表示されるので、上で紹介したプロンプトをコピペし、[作成]ボタンをクリックする。
画面右にマインドマップ作成のためのプロンプトが自動生成され、待機状態となる。
下に表示される[生成]ボタンをクリックすると、マインドマップが生成される。
生成されたマインドマップ
GitMindによって生成されたマインドマップはこちら。
GitMindはシンプルなプロンプトから独自にアイデアを膨らませ、このようにマインドマップを生成してくれる。
ホワイトボードを使い、プロジェクトメンバ同士でマインドマップを作成する場合、これだけの情報量を描こうとすれば、時間は何十分もかかるだろう。そもそも、これだけのアイデアを出すこと自体、至難の技である。しかし、GitMindがあれば、ほんの数秒で、豊富な情報を持つマインドマップを作成することが可能だ。
テーマを与えるだけで、アイデア満載のマインドマップを作成してくれる様は感動ですらある!!
生成されたマインドマップは編集可能
生成されたマインドマップは静止画ではなく、編集可能である。つまり、文字の部分のテキスト修正や、マップ上の図形(文字を含む)を自由に移動することが可能だ。つまり、生成されたマインドマップを叩き台にして、アイデアを膨らませ、ディスカッションすることができる。それこそが、マインドマップを利用する意義である。
マインドマップのエクスポート
GitMindによって生成されたマインドマップは、ファイルにエクルポート(ダウンロード)できる。エクスポート可能なファイルの形式は次の通りだ。
「高解像度でエクスポート」は有料版の機能だが、よほど大きなマインドマップを作成しない限り、無料版の解像度でも十分な出力を得られる。
ちなみに、上で紹介したマインドマップは、無料版によるエクスポートなので通常の解像度である。しかし、画像やフォントが潰れるということもなく、拡大してもまったく問題ないレベルである。
GitMind無料版の制限
GitMindの無料版と有料版の比較表は以下。
無料版では、作成可能なマインドマップは10個に制限される(上表で「ファイル数」の10というのが、それに該当する)。
作成済みのマインドマップは(エクスポートして)削除すれば、新たなマインドマップを作成できるため、上手くやりくりすれば、あまり不自由を感じない。
生成できるマインドマップの数や、エクスポートできる解像度に制限はあるものの、無料版でもGitMindは十分に使える、というのが筆者の率直な感想である。
まとめ:GitMindでマインドマップを自動生成し、ブレストに集中
S/4HANAの導入プロジェクトにおいて、効果的なブレインストーミングやディスカッションは成功の鍵である。従来の手作業によるマインドマップ作成には課題が多いが、GitMindを活用すれば、マインドマップを自動生成できるので、手書きマインドマップの課題を解決し、ブレストに集中できるようになる。それは、ミーティングの効率化とアイデアの質向上につながるだろう。プロジェクト成功のために、GitMindを導入してみてはいかがだろうか。
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