ビジネスにおいて、長文メールは一種のハラスメントとも言える。
ダラダラと書かれ、長々と続くメールは、内容が分かりにくく、読むのに時間がかかる。
いったい、なにが言いたいんだ!?という難解なメールは、仕事の邪魔になる上、結論に辿り着くまでに疲れてしまうことも多い。最後まで読んだものの、結局、結論は書かれていなかった、というオチも。このような長文メールは、読む側にとって大きな負担となり、生産性を下げる原因となる。
しかし、ビジネスのやり取りの中で、相手からのメールを無視することはできない。
そこで役に立つのが、生成AIを活用した要約だ。長文メールを的確に要約することで、重要なポイントだけを素早く把握できるようになり、業務効率が大幅に向上する。
長文メールはハラスメントです
長文メールをハラスメントと感じる理由
長文メールを読むこと自体がストレスだが、長文メールがハラスメントに感じられる理由はいくつかある。
要点が見えない
長々と続くメールでは、何が重要で、どこが結論なのかが分かりにくい。読む側としては、いくつもの段落を読み進めても、要点が見えてこないことが多い。
時間を無駄にする
ビジネスにおいて、時間は貴重な資源である。しかし、長文メールは、読むだけで時間がかかる。しかも、その内容が役に立たない場合は、さらにフラストレーションが溜まる。時間を奪う行為そのものが、ハラスメントに値する。
生産性を下げる
長文メールを読むには、時間だけでなく、読解するためにエネルギーを消費させられる。長文メール読解にエネルギーを費やされた結果、他の業務に対する活力は削がれ、生産性を低下させる原因となる。
ダラダラした長文メールは相手の時間を奪う行為だから、迷惑だし、ハラスメントになるんだな。
長文メールを書く人は仕事ができない
ビジネスにおける生産性は、時間あたりのアウトプットの量で決まる。ある人が一定の時間で出せるアウトプットを、別の人が倍の長時をかけて同じアウトプットしか出せないのなら、その人の生産性は低いということになる。
メールで用事を伝えるとき、同じ内容なら短いメールの方が、書く時間も読む時間も短くて済むので、生産性は高くなる。生産性を高くするには、メールはできるだけ短くしなければならない。生産性を意識すれば、メールの文章は余計なものを削ぎ落とし、短くなるものだ。
しかし、長文メールを書いて送る人というのは、この生産性を意識できない。メールを簡潔に書き、短い時間で相手に読ませるというのができない人だ。自分の時間を浪費するだけでなく、相手の時間も奪ってしまう。
だから、長文メールを書いて送る人というのは、仕事のできない、迷惑な人なのである。
相手のことを思いやれない人って、仕事できない人だよな・・・
ビジネスメールに必要な要素とは
ビジネスメールの目的は5つしかない
ビジネスメールで伝えなくてはならない用件・目的は、およそ次の5つに大別される。
- 報告
- 連絡
- 相談
- 依頼
- 提案
細かく分類すれば他にもあるが、ビジネスメールで相手に伝えたいことは、上の5つのどれかに当てはまるはずである。
タイトルだけで伝えるのが理想
メールのタイトルに、上記の5つのいずれかを書くと良い。そうすれば、タイトルだけでメールの用件を相手に伝えることができる。
たとえば、クライアントを訪問する日時を決める「相談」メールの場合を考えてみよう。ダメなメールタイトルの例はこうだ。
〇〇社について
メールを受け取った方は、「〇〇社の何なの???」とクエスチョンマークが幾つも点灯するに違いない。メール本文を読むまでは、それが〇〇社に関する報告なのか、情報共有なのか、何かを決めたい相談なのか、解らないはずだ。
このように、メールタイトルに「~について」と書く人をよく見かけるが、何の用事のメールなのか、相手に考えさせてしまうようなタイトルは、スピード重視のビジネスにとってNGである。
上のメールタイトルは、次のように書くのが正しい。
【相談】〇〇社訪問日時と資料準備
こう書けば、このメールは「〇〇社の訪問日時や、持参する資料の構成の相談をしたいのだな」と、タイトルの段階で相手は判断できる。
また、「依頼」メールなら、依頼内容だけでなく、「この日までにお願いします」という「期限」も重要だ。次の例のように、タイトルに期限も書いておけば、タイトルだけで依頼の主旨と期限を、相手に伝えることができる。
【依頼】〇〇向け資料作成(9/21迄)
このように、ビジネスメールで伝えるべき目的は、報告/連絡/相談/依頼/提案のどれかである。メールタイトルで、このいずれかを先に伝えるようにすれば、メールを読む側は、メール本文を読む前からメールの中身を予想できるので、スムーズにメールを読み進めることができる。
長文メールを生成AIで変換するメリット
長文メールを書いて送ってくる人は、仕事のできない人である。しかし、ビジネスにおいては、仕事のできない人とも一緒に仕事をしなければならない。
そこで、生成AIを使って、難解な長文メールを、理解しやすいビジネスメールに変換するという手段がある。ダラダラと書かれている長文メールから、ビジネスに必要な要素だけを抜き出し、仕事で使えるメールへと、生成AIに要約してもらうのだ。
長文メールをビジネスメールに変換する
生成AIは、長文メールというハラスメントをやわらげる有力なツールである。生成AIを活用することで、メールの要点を瞬時に把握し、重要な情報だけを効率的に取り出すことが可能だ。特に、以下のようなメリットがある。
時間の節約
AIがメールの内容を要約してくれるため、読む時間を大幅に短縮できる。これにより、他の重要な業務に集中できる時間が増える。
ビジネスメールとしての必要な要素を抽出
AIは、メールに書かれている内容から、報告/連絡/相談/依頼/提案 のどれに該当するのかを自動で分類し、それぞれに必要な情報を的確に抽出する。
依頼内容の重要要素を抽出
特に、メールが相手からの「依頼」だった場合、AIは見逃してはならない「依頼内容」「期限」を、正確に抽出することができる。これにより、長文の中に隠れた重要なタスクを見逃さず、迅速に対応できるようになる。
読めない長文メールは生成AIで要約しよう
では、迷惑な長文メールを、使えるビジネスメールに変換するための方法を見ていこう。
長文メールが送られてきた!(シミュレーションです)
次のような、何を言いたいのかわからないダラダラと書かれたメールが送られてきたとする。
うわぁ、またあの人からの、長々としたメールだよ!
読む気しないなぁ・・・
ABC株式会社 PMO 山田様
お世話になっております。XYZ株式会社のプロジェクトマネージャー、田中です。
現在進行中のITシステム開発プロジェクトについて、いくつか確認事項とご連絡があります。プロジェクトの進捗と遅れている作業についてですが、特にプログラム開発は進捗が1週間遅れているという報告を受けておりますので、その点についてもご確認をお願い致します。エンドユーザから追加の要望が出ており、対応するには仕様変更する必要があるため、追加のコストがかかることも考慮に入れていただければと思います。
また、解決していない課題が数件あるとのことですが、そのうち課題#201は今月末が期限となっておりますので、至急に貴社の鈴木様と対策会議を開催したいと考えております。現行システムの帳票サンプルを送っていただけると助かります。さらに、佐藤様から問題提起された翌月末期限の課題#301もございますので、これらについての進捗状況も教えていただければと思います。
残課題のうち、責任者が決まっていない課題がいくつかあるということも確認しております。残課題のうち、お客様に対応をお願いしているものがあり、報告を頂けていない件についてもご確認ください。
プロジェクトの進捗と遅れている作業について、全体的な状況を再確認することが重要です。特にプログラム開発は進捗が1週間遅れている点が気になりますので、早急に対応策を講じる必要があるかと思います。また、エンドユーザからの追加の要望についても、仕様変更が必要であり、追加のコストがかかるとのことですので、ご確認をお願いします。
以上、現状のご報告と確認事項についてお知らせしましたが、他に必要な情報があればお知らせください。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
XYZ株式会社 プロジェクトマネージャー 田中
もうちょっと、要領よく書けないかねぇ・・・
(上の例文は一見しただけでウザい。誰も読まないだろうなぁ笑)
これは誇張したフィクションだが、こういった「何が言いたいんだ!?」と叫びたくなるようなメールは、来る時は来てしまう。読む気はしないが、読まないことには仕事にならない。
このメールには、依頼や相談など、複数の用件が書かれているようだが、それぞれの要点や期限を解読するには骨が折れそうだ。
しかし、生成AIは、メールに書いてある複数の用件を仕分けし、それぞれの要点や期限を、瞬時に整理してくれる。
長文メールを生成AIで要約(単純に要約)
上のダラダラとしたメールを、ChatGPT 4oに向かって単純に「要約して」と依頼すると、次のように要約してくれる(生成AIは人間同様、同じ依頼に対して同じ回答を返さない。下の例は、あくまでその時の回答)
山田様
お世話になっております。XYZ株式会社の田中です。
以下、現在のITシステム開発プロジェクトについてのご連絡です。
- 進捗遅延: プログラム開発が1週間遅れているため、ご確認をお願いします。
- 仕様変更とコスト増加: エンドユーザからの追加要望に対応するには仕様変更が必要で、追加のコストが発生する可能性がありますので、ご検討ください。
- 課題#201: 今月末が期限ですので、鈴木様と対策会議の開催を希望します。
- 課題#301: 翌月末が期限のため、佐藤様と進捗状況のご共有をお願いします。
- 残課題: 責任者未定の課題や報告が未提出の案件があるため、確認をお願いします。
詳細な進捗確認とご対応をお願いできれば幸いです。必要な情報があればご連絡ください。
よろしくお願い申し上げます。
XYZ株式会社 田中
すごい!
こんなに短く読みやすくなった!!
プロンプトを使わない単純な要約だけでも、だいぶ読みやすくなった。どうやら、用件は5つあるようだ。
しかし、それぞれの用件が、報告/連絡/相談/依頼/提案のどれなのか解らない。もしも、「依頼」が混じっているなら、それを見逃さないようにしたいが、一つ一つの用件をよく読まなければ、見分けることはできないようだ。
「ひと目で解る」レベルの要約を得るため、次はプロンプトを使って生成AIに依頼しよう。
長文メールを 生成AI+プロンプトで要約
プロンプトの例
要領を得ない長文メールを、ビジネスで使えるメールに変換するための、生成AI用のプロンプトが以下だ。
#依頼 あなたは電子メールを要約する名人です。 長くて読み難い長文メールを、トピック別に、解りやすく、読みやすくして、回答として出力してください。 -出力は表形式。表の列は「トピック名」「トピック種類」「トピック要約」「責任者・担当者」「期限」 -「トピック種類」の値は、{#メール目的}の中から選んで出力値としてください。 -「責任者・担当者」が不明のトピックの出力値は「不明」としてください。 -「期限」が不明のトピックの出力値は「不明」としてください。 -回答を作成したら、出力する前に「期限」の古い順に並べ替えてください。「期限」が不明なトピックは、「期限」有りのトピックよりも後ろに並べてください。並べ替えた回答を、回答として出力してください。 #メール目的 -報告 -連絡 -相談 -依頼 -提案
- このプロンプトでは、メールに書かれている複数の用件の中から、個々のトピックを抽出し、報告/連絡/相談/依頼/提案 のいずれかに仕分けして出力する。
- それぞれのトピックについて、要約と期限を明記する。さらに、期限の早いものから順に並べ替える。並べ替えることで、作業に優先順位をつけられる。
- 出力は表形式。表形式が見やすいのと、メールの中に「依頼」が含まれる場合は、着手・完了などのステータスをチェックするリストとしても使える。
上のプロンプトを、実際に生成AIで使う方法は、以下の記事を参照してほしい。
出力結果の例
生成AI+プロンプトで、報告/連絡/相談/依頼/提案 で仕分けし、表形式で出力したものが以下である。
トピック種類 | トピック名 | トピック要約 | 責任者・担当者 | 期限 |
---|---|---|---|---|
依頼 | 課題#201の対策会議の開催 | 課題#201が今月末が期限のため、鈴木様と対策会議を開催したい | 鈴木様 | 今月末 |
依頼 | 課題#301の進捗確認 | 佐藤様から問題提起された課題#301の進捗状況について報告をお願いしたい | 佐藤様 | 翌月末 |
報告 | プログラム開発の進捗遅れ | プログラム開発が1週間遅れており、早急に対応が必要 | 不明 | 不明 |
連絡 | エンドユーザからの追加要望 | エンドユーザからの追加要望により、仕様変更が必要で追加コストが発生する可能性がある | 不明 | 不明 |
相談 | 残課題の責任者未決定 | 残課題のうち、一部の課題で責任者がまだ決まっていない | 不明 | 不明 |
連絡 | 顧客からの報告未着 | 顧客に依頼している件に対する報告がまだ届いていない | 不明 | 不明 |
依頼 | 現行システムの帳票サンプル | 現行システムの帳票サンプルを送っていただきたい | 不明 | 不明 |
書かれている用件が、報告/連絡/相談/依頼/提案 のいずれなのか、先頭の「トピック種類」を見るだけで、すぐに判別できるようになっている。「依頼」は、担当者と期限を明記することによって、そのタスクを、誰が何時までに完了させるべきなのか、ひと目でわかるようになっている。ここまでの要約ならば、相手からの「依頼」を見逃す心配はないだろう。
「依頼」のうち、担当者と期限が「不明」となっているのは、メールに書かれていた情報が不十分だったということである。このままでは、正しいアクションを起こせないので、不明点は至急確認すべきだろう。
「依頼」は、担当・期限が明記されているので、頼まれたことを確実に遂行できるぞ!
まとめ:長文メールによるハラスメントには生成AIで対抗しよう
要領を得ない長文メールは、読むだけでストレスが溜まる「ハラスメント」行為と言っても過言ではない。しかし、生成AIを活用すれば、その負担を大幅に軽減できる。
生成AI+本記事のプロンプトを使えば、迷惑な長文メールを、「報告」「連絡」「相談」「依頼」「提案」の用件別に仕分けし、要点を抽出して見せてくれる。さらに、「依頼」なら担当者や期限も抽出するので、依頼された仕事を忘れずに始められるはずだ。
時短や生産性向上に繋がるため、生成AIを活用したメールの要約は、現代のビジネスシーンにおいて不可欠なスキル、作業と言えるだろう。
実際、筆者は長文メールに対しては、この記事で紹介したプロンプトと一緒に生成AIを活用し、的確な要約を得られるようになったので、長文メールを読解するストレスから開放された(生成AIってスゴイ!)。
皆さんも、この記事のプロンプトとセットで生成AIを活用し、長文メールのハラスメントから自分の身を守るだけでなく、仕事の効率をアップさせてほしい。
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