バッチインプットできるSAPトランザクションコード一覧(対応BAPI付)

バッチインプットは、トランザクションコード実行時のSAP GUIの画面操作を模倣し、SAPシステムにデータを一括登録する、SAPシステムにおける代表的なデータ登録の手段である。しかし、全てのトランザクションコードがバッチインプットに対応しているわけではない。どのトランザクションコードがバッチインプット可能なのか?

本記事は、バッチインプットとは何か、メリットには何があるのかを説明し、SAP標準トランザクションコード(T-CODE)のうち、「バッチインプット可能」なトランザクションコードの一覧を発表する。

一覧には、トランザクションコードと同等の機能を持つBAPI(汎用モジュール)と、対応するFiori IDも合わせて載せておく。

  • このT-CODEはバッチインプットできるのだろうか?
  • このT-CODEを代替するBAPIはどれだろう?

と迷っている、SAPユーザやSAPコンサルタントは、是非参考にしてほしい。

目次

バッチインプットとは

SAPシステムにデータを登録する手段の一つ

バッチインプットとは、SAPシステムにおける代表的なデータ登録手段の一つである。

トランザクションコードを実行してデータ登録を行う時の画面操作を記録し、その画面操作をSAPシステムに再現させることでデータ登録を行う。RPA、あるいはExcelの「マクロレコーダー」のような、データ登録を自動実行する仕組みだ。

SAP GUIを画面操作した記録データは、「アドオン」と呼ばれるカスタム開発プログラムや、ABAP以外の外部のシステムからも利用することができる。

バッチインプットできないトランザクションコードだってある

バッチインプットは、全てのSAPトランザクションコードに利用できる、というわけではない。

トランザクション実行時、画面操作の一部は記録できないなどの理由で、バッチインプットできないトランザクションコードは存在する。

バッチインプットできない理由や、バッチインプットできない代表的なトランザクションを解説した記事は以下。

また、バッチインプットと並ぶ、SAPシステムにデータを登録する手段に「BAPI」がある。バッチインプットが不可能な場合、BAPIを利用するという手もある。バッチインプットとBAPIとの違いや、どのようなデータ登録にバッチインプットが向いているか、あるいはBAPIが向いているのかを解説した記事は以下。

バッチインプットできることのメリット

ハードルが低い

SAP GUIの画面操作を記録し、その操作を再現することでデータを登録できる。SAP GUIの画面操作は、SAPシステム特有のデータ構造やプログラミングの知識がなくても可能なので、エンドユーザでもやろうと思えばできる。要するに、ハードルが低い。

開発生産性が高い

画面操作の記録データは、「アドオン」と呼ばれるカスタム開発プログラムを作成することで利用できる。画面操作を再現することでデータ登録のプログラムを実現でき、データを登録するプログラムをゼロから書く必要がないため、開発生産性が高い。

サードパーティのデータ登録ツールを利用できる

バッチインプットを利用する手段は、アドオンだけではない。

サードパーティ製のデータ登録ツールには、バッチインプットの技術を利用するものが存在する。

以下は、バッチインプットを使ってSAPシステムにデータを一括登録できる、代表的なサードパーティ製のデータ登録ツールの一覧である。これらの製品を利用すれば、アドオンを開発しなくても、バッチインプットによってSAPシステムにデータを一括登録できる。つまり、アドオン開発を抑止し、開発コストの削減を実現する。

ツール名称販売/開発元特長
MALSY三菱電機インフォメーションシステムズExcelからSAPシステムへ直接データ登録が行える。バッチインプットとBAPIをサポート。エンドユーザーがSAPシステムを意識せずに操作可能で、エラーメッセージやステータスを即時にExcelに返す機能も備えている。
Precisely Automate
(旧Winshuttle)
PreciselyExcelやAccessと連携し、バッチインプットを用いてSAPにデータをインポート・エクスポートできるツール。ユーザーフレンドリーなインターフェースで、SAP GUIに依存しない操作が可能。
Syniti Data WorkBenchクライム/SynitiExcelを介してSAPシステムとのデータ連携を簡素化する。プログラミング不要で3ステップの簡単操作、迅速な導入、高品質なデータ入力、効率的なプロセスを実現。
汎用バッチインプット三井金属ユアソフトExcelシートやテキストファイルからSAP ERPにデータを登録可能。マスタデータや伝票の登録・変更・削除、残高移行など多様な用途に対応し、Excelシート自動生成機能もある。
バッチインプットを利用するサードパーティのデータ登録ツール

バッチインプットできるSAPトランザクションコード一覧

バッチインプット可能なトランザクションコード(T-CODE)の一覧を、SAPモジュール別にまとめた表を以下に発表する。表には、T-CODEと同等の機能の持つBAPI/汎用モジュールと、S/4HANA向けのT-CODEに対応するFiori IDも合わせて記載しておいた。

  • T-CODE: VA01(受注登録)など、一定の条件であればバッチインプット可能だが、バッチインプットに完全に対応していないトランザクションコードは、一覧から除外した。

下表のT-CODEは、筆者が実際にバッチインプットを試して実行できたT-CODEである。上記のサードパーティ製データ登録ツールを使うことも可能だ。

なお、下の一覧は、バッチインプットの可否を保証するものではない。実際にバッチインプットできるかどうかは、SAPシステムのバージョン、コンフィギュレーション(パラメータ設定)、登録するデータなど、様々な条件によって変わる。読者の環境でバッチインプット可能かどうかは、下表を参考に、実際にT-CODEを動かして確かめてほしい。もちろん、下表以外にも、バッチインプット可能なT-CODEは存在するはずだ。

CO: 管理会計

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
KB11NEnter Manual Repostings of Costs一次原価のマニュアル再転記入力F2009
KB21NEnter Direct Activity Allocation直接活動配分入力F3697
KEMDMProfit Center Master Data Maint.利益センタ登録
KEMDMProfit Center Master Data Maint.利益センタ変更
KL01Create Activity Type活動タイプ入力F1025
KO02Change Order内部指図変更KO02
KP26Change Plan Data for Activity Types変更 活動タイプ/価格計画KP26
KS01Create cost center原価センタ登録F1023
KS02Change cost center原価センタ変更
MR21Price Change価格変更F2680

FI: 財務会計

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID Corresponding Fiori ID
AIABAuC Assignment of Dist. Rule決済規則の建設仮勘定割当AIAB
FB01Post Document伝票転記BAPI_ACC_DOCUMENT_POSTFB01
FB08Reverse Document伝票の反対仕訳FB08
FBN1Accounting Document Number Ranges会計伝票番号範囲FBN1
FD01Create Customer (Accounting)得意先登録 (会計)
FI01Create Bank銀行登録F1574
FI02Change Bank銀行変更FI02
FK01Create Vendor (Accounting)仕入先登録 (会計)
FK02Change Vendor (Accounting)仕入先変更 (会計)
FS00G/L acct master record maintenance勘定コードマスタレコード更新F0731
FSP0G/L acct master record in chrt/accts勘定コード表勘定コードマスタレコードFSP0
FSS0G/L account master record in co code会社コードの勘定コードマスタレコードFSS0
KA06Create Secondary Cost Element登録: 二次原価要素
OBA7C FI maintain table T003C FI 更新 テーブル T003OBA7
OBB8C FI Maintain Table T052C FI テーブル変更 T052
OBD2C FI Maintain Table T077DC FI テーブル T077D 更新
OBD2C FI Maintain Table T077DC FI テーブル T077D 更新
OBD3C FI Maintain Table T077KC FI テーブル T077K 更新
OBD3C FI Maintain Table T077KC FI テーブル T077K 更新
XDN1Maintain Number Ranges (Customer)番号範囲更新 (得意先)
XKN1Display Number Ranges (Vendor)番号範囲照会 (仕入先)
ABZOAsset acquis. autom. offset. posting取得資産の自動相殺記帳
AS01Create Asset Master Record資産マスタ登録BAPI_FIXEDASSET_CREATE1AS01
AS02Change Asset Master Record資産マスタ変更AS02
AS91Create Old Asset旧資産データ登録AS91
F-90Acquisition from Purchase w. Vendor購買からの取得 (仕入先あり)F-90
F-92Asset Retire. frm Sale w/ Customer得意先への資産売却F-92
OAV8FI-AA C Def. Eval. Group, 8 placesFI-AA C 8 箇所の評価グループ定義
XD01Create Customer (Centrally)得意先登録 (共通)
XD02Change Customer (Centrally)得意先変更 (共通)
XK02Change Vendor (Centrally)仕入先変更 (共通)

MM: 在庫購買管理

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
MB1AGoods Withdrawal出庫登録BAPI_GOODSMVT_CREATE
MB1BTransfer Posting在庫転送登録BAPI_GOODSMVT_CREATEF1061
MB1COther Goods Receipts発注外入庫登録BAPI_GOODSMVT_CREATE
MB22Change Reservation入出庫予定変更MB22
MBSTCancel Material Document入出庫伝票取消
ME01Maintain Source List供給元一覧更新F0840A
ME11Create Purchasing Info Record購買情報登録F0840
ME12Change Purchasing Info Record購買情報変更ME12
ME21Create Purchase Order購買発注登録F0842A
ME22Change Purchase Order購買発注変更BAPI_PO_CHANGE
ME28Release Purchase Order購買発注承認ME28
ME52Change Purchase Requisition購買依頼変更BAPI_PR_CHANGE
MI01Create Physical Inventory Document実地棚卸伝票登録BAPI_MATPHYSINV_CREATEF1512
MI02Change Physical Inventory Document実地棚卸伝票変更BAPI_MATPHYSINV_CHANGECOUNTMI02
MI04Enter Inventory Count with Document実地棚卸検数の入力 (伝票あり)BAPI_MATPHYSINV_COUNTF5430
MI05Change Inventory Count棚卸検数変更BAPI_MATPHYSINV_CHANGECOUNTMI05
MI07Process List of Differences棚卸差異一覧処理BAPI_MATPHYSINV_POSTDIFFMI07
MI09Enter Inventory Count w/o Document棚卸検数入力 (伝票参照なし)MI09
MM01Create Material &品目 & 登録BAPI_MATERIAL_SAVEDATAF1602
MM02Change Material &品目 & 変更BAPI_MATERIAL_SAVEDATAMM02
MM06Flag Material for Deletion品目削除フラグ
MMSCEnter Storage Locations Collectively保管場所の一括入力

PP: 生産計画管理

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
C223Maintain Production Versions製造バージョンの更新
CA02Change Routing変更作業手順CA02
CA10Std. Text for Task List/Order業務一覧/指図の標準テキストCA10
CO01Create Production Order製造指図登録BAPI_PRODORD_CREATECO01
CO02Change Production Order製造指図の変更BAPI_PRODORD_CHANGECO02
CO07Create Prod. Order w/o Material製造指図登録 (品目なし)CO07
CO10Create Production Order with Projectプロジェクトによる製造指図登録CO10
CO11Enter Time Ticket作業記録票入力BAPI_PRODORDCONF_CREATE_TTF2822
CO40Convert Planned Order計画手配変換BAPI_PRODORD_CREATE_FROM_PLORDCO40
CO41Coll. Conversion of Planned Orders計画手配一括変換BAPI_PRODORD_CREATE_FROM_PLORDCO41
COR1Create Process Orderプロセス指図登録BAPI_ALM_ORDER_MAINTAINCOR1
COR2Change Process Orderプロセス指図変更BAPI_ALM_ORDER_MAINTAINCOR2
CR01Create Work Center作業区登録CRAP_WORKCENTER_CREATECR01
CR02Change Work Center作業区変更CRAP_WORKCENTER_CHANGECR02
CR09Task list reference textタスクリスト参照テキスト
CR11Add Capacity能力追加CR11
CR12Change capacity能力変更CR12
CS01Create Material BoM品目 BOM 登録CSAP_MAT_BOM_MAINTAIN※1
BAPI_MATERIAL_BOM_GROUP_CREATE
BAPI_BOM_UPLOAD_SAVE
CS01
CS02Change Material BoM品目 BOM 変更CSAP_MAT_BOM_MAINTAIN※1
CSAP_MAT_BOM_DELETE※1
BAPI_MATERIAL_BOM_GROUP_CREATE
BAPI_BOM_UPLOAD_SAVE
CS02
MB31Goods Receipt for Production Order製造指図入庫登録BAPI_GOODSMVT_CREATE
MD02MRP – Single-Item, Multi-LevelMRP – 単一品目、多段階MD02
MD11Create Planned Order計画手配登録BAPI_PLANNEDORDER_CREATEMD11
MD12Change Planned Order計画手配変更BAPI_PLANNEDORDER_CHANGE
BAPI_PLANNEDORDER_DELETE
MD12
MD20Create Planning File Entry計画ファイルエントリ登録MD20
MD61Create Planned Indep. Requirements計画独立所要量の登録BAPI_REQUIREMENTS_CREATEF1079
MD62Change Planned Indep. Requirements計画独立所要量の変更BAPI_REQUIREMENTS_CHANGEMD62
MS11LTP: Create planned orderLTP: 計画手配登録BAPI_PLANNEDORDER_CREATEMS11
MS12LTP: Change planned orderLTP: 計画手配変更BAPI_PLANNEDORDER_CHANGE
BAPI_PLANNEDORDER_DELETE
MS12
MS20Planning File Entry: Long-Term Plnng計画ファイルエントリ: 長期計画
PK05PP Maintain Supply Area (Kanban)PP 供給場所更新 (かんばん)F6935

※1: S/4HANAのバージョンによってはブロックリストに登録されており使用不可。

PS: プロジェクト管理

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
CJ01Create Work Breakdown StructureWBS 登録BAPI_PROJECT_MAINTAINCJ01
CJ02Change Work Breakdown StructureWBS 変更BAPI_PROJECT_MAINTAINCJ02
CJ06Create Project Definitionプロジェクト定義登録BAPI_PROJECT_MAINTAIN
BAPI_PROJECTDEF_CREATE
CJ06
CJ07Change Project Definitionプロジェクト定義変更BAPI_PROJECT_MAINTAINCJ07
CJ11Create WBS ElementWBS 要素登録CJ11
CJ12Change WBS ElementWBS 要素変更CJ12
CJ20Structure planning構成計画CJ20
CN08Allocate material -> stand. network品目割当 -> 標準ネットワークCN08
CN22Change Networkネットワーク変更CN22
CS71Create WBS BOMWBS BOM 登録CS71
CS72Change WBS BOMWBS BOM 変更CS72

SD: 販売管理

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
FD32Change Customer Credit Management得意先与信管理変更
VB01Create Material Listing/Exclusion品目制限/除外の登録VB01
VB02Change Material Listing/Exclusion品目制限/除外の変更VB02
VBN1Free Goods – Create (SD)無償品 – 登録 (SD)VBN1
VD01Create Customer (Sales)得意先登録 (SD)
VD51Maintain Customer Material得意先品目更新F2499
VF01Create Billing Documents請求伝票登録BAPI_BILLINDOC_CREATE
BAPI_BILLINDOC_CREATEFROMDATA
BAPI_BILLINDOC_CREATEMULTIPLE
BAPI_BILLINGDOC_CREATEMULTIPLE
F0798
VF02Change Billing Documents請求伝票変更F0797
VK11Create Condition条件登録VK11
VK12Change Condition条件変更F4111
VL01NCreate Outbound Dlv. with Order Ref.出荷伝票登録 (受注参照)BAPI_OUTB_DELIVERY_CREATE_SLSF3487
VL01NOCreate Outbound Dlv. w/o Order Ref.出荷伝票登録 (受注参照なし)BAPI_OUTB_DELIVERY_CREATE_SLSF3488
VL02NChange Outbound Delivery出荷伝票変更VL02N
VPE1Create sales representative営業員データ登録

モジュール非依存

T-CODEトランザクション名
Transaction Name EN
トランザクション名
Transaction Name JA
対応するBAPI
Corresponding BAPI
対応するFiori ID
Corresponding Fiori ID
BPMaintain Business Partnerビジネスパートナー更新BAPI_BUPA_CREATE_FROM_DATABP
SM30Call View Maintenanceビュー更新呼出
SU01User Maintenanceユーザ管理

まとめ: バッチインプットでデータ登録を効率良く

バッチインプットは、SAPシステムに一括でデータを登録する代表的な手段の一つである。ユーザーの画面操作の記録を基にしてデータ登録を行うアプリケーションを作成できるため、ハードルが低く、開発生産性の高い手法である。

バッチインプットを実際に使ってデータを登録するには、アドオンと呼ばれるプログラムを開発する以外に、サードパーティ製のデータ登録ツールを使う方法もある。ツールを使えば、アドオン開発を回避でき、開発工数とコストを大きく削減することが可能だ。

本記事で紹介した「バッチインプットできるトランザクションコードの一覧」を参考に、バッチインプットを上手く活用し、SAPシステムの開発生産性向上とコスト削減を現実のものにしてほしい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次