個人利用のSAP環境を【超低価格】で手に入れた話

個人向けSAP環境を格安低価格で入手する方法

SAP S/4HANAを自宅でも触りたいなあ ……

SAPコンサル・開発者なら、一度はこう思ったことがあるはずだ。

しかし、SAPのライセンスは高額で手が出ない。BC(ベーシス)コンサルならともかく、環境をイチから構築できる技術も根性もない。そもそも、SAPシステムは家電量販店や Amazon や 楽天 で売っていない。
要するに、「SAPの個人利用」というのを SAP社は最初から考えていないのである。

しかし、諦めきれずにネットを探していると、インドの Professor’s Remote System Access(Professor’s RSA) というサービスが、なんと 50USD/月(日本円 7,000~8,000)SAP S/4HANA 2023 – Fully Activated Appliance を触れる環境を提供していることを知った。

ただし問題がある。

  • 日本語のレビュー:皆無
  • 英語圏のレビュー:皆無
  • 聞いたことのないインドの会社

「いや、さすがにヤバいだろ・・・」
正直、そう思った。

しかし、$50/月という値段は、他の同様なサービスと比べれば破格の安さである。
この値段で自由に使えるS/4HANAを手に入れられるとすれば、抗い難い魅力だ。

「これは誰かが体を張って検証しないといけないやつだ」
と腹を括り、筆者が実験台になることにした。
実際に申し込み、課金をし、ログオンして、各機能を触ってみたのだ。

今回の記事は、そうして得た知見をまとめたものである。

「SAPを個人で利用できる環境を低価格で手に入れたい」と思っている方には、この記事は大いに参考になるはずだ。

目次

SAP S/4HANAを個人利用できるサービス

SAPを個人利用できるサービスの比較

最初に、Professor’s RSAのサービス価格が”破格“であることを明確にするため、「個人で申し込めるSAP S/4HANA環境」の代表的?なサービスを整理しておく。

サービス名中身価格コメント
Professor’s RSAS/4HANA 2023 FAA50 USD/月今回の主役。この中で最安だが情報は少ない。
MICHAEL MANAGEMENTS/4HANA 2023 FAA169 USD/月名だたる大企業も利用中なので安心。
ERP Corp – LIVE SAP AccessS/4HANA 2023 FAA139 USD/月日系企業も利用しており安心。
SAP CAL + クラウドS/4HANA 2023 FAA初月のみ無料。クラウド料金は別途。従量課金なので高額になりやすい自由度最強。ただしインフラなどの運用は自前。

ご覧の通り、Professor’s RSA の価格設定はかなり攻撃的だ。
しかし安い分、機能・権限・信頼性・性能・安定性は、実用に耐えられないほど低いのかもしれない。

そこで筆者が突撃した、という流れになる。

Professor’s Remote System Accessとは

Professor’s RSAは、Azure(Microsoftクラウド)上のSAPシステムへリモートで接続できる環境を提供するサービスだ。
LinkedInの投稿日を見ると、2023年12月頃からサービスを開始していたようである。

Professor's Remote System Access

HPに書かれている説明から判断する限り、S/4HANA 2023 と コア機能の SAP Best Practices が事前有効化された状態で提供されるようである。また、マスターデータガバナンス(MDG)、輸送管理(TM)、ポートフォリオ管理(PPM)、人的資本管理(HCM)、アナリティクス向けの追加シナリオなども提供されるとのこと。

さらに、IBP、Analytics Cloud、Ariba、BTP、旧 ERP 6.0 など、様々なSAPソリューションもラインナップしているようである。

Professor's RSAがサポートするSAPサービス

一方、「50 USD/月」という価格表示はHP上には見当たらず、申し込みページに進むと表示されるようになっている。

というわけで、申し込んでみる。

利用開始までの流れ

デモのリクエスト(サービス申し込み)

Request Demo(デモのリクエスト)」というボタンから、サービスを申込みむようになっている。
ちなみに、申し込むだけでは支払いは発生しない。支払い情報の入力も求められないので、申し込み自体は安心して行える。

Professor’s RSA 上のボタン「Request Demo」をクリック。

Professor's RSAの申し込み開始

User Request Form」が表示されるので、

  • 名前(Name)
  • メールアドレス(Email ID)
  • 電話番号(Phone Number)

に値を入力していく。

Professor's RSAの申し込みフォーム

入力フォームはとてもシンプル。
Microsoft 365 の標準的な仕組みを利用しているので、手作り感が漂う。ゆえに、ちょっと不安な気持ちにさせられる。

入力して下にスクロールすると、「4.Which SAP System you need access ?」という質問が出てくる。
ここで S/4HANA や Ariba、BTPといったSAP製品を選択するので、とても重要だ。

筆者の目的はS/4HANAを利用することなので、「SAP S/4HANA 2023 – Fully Activated Appliance」一択である。

Professor's RSAの申し込みフォームよりSAP製品の選択

SAP S/4HANA を選択して下にスクロールすると、次は「5.Which SAP Module you need access?」という質問が出てくる。
利用するSAPモジュールを選択するのだが、S/4HANA 2023 – Fully Activated Appliance 自体が「全部載せ」なので、モジュールを個々に選択する意味はあまりないと思われる。
おそらく、アンケートのようなものだろう。

どれを選んでもよさそうだが、筆者はPPコンサルがメインなので、一応「SAP PP – SAP Production Planning」を選択しておく。

Professor's RSAの申し込みフォームよりSAPモジュールの選択

ここまでくると、「6.Duration?」、利用期間/料金の質問が現れる。

Professor's RSAの申し込みフォームより利用期間の選択

期間は、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月 の三通りから選べる。
この期間は「指定した期間まで利用できる」という意味ではなく(後述するが自動更新だから)、料金決定のために用いられる。期間が長いほど割引率が上がり、3ヶ月では13%、6ヶ月では17%の割引となっている。

とはいえ、初めて使うヤバそうなサービスなので、コスト効果よりもリスクヘッジだ。
迷わず 「1 Month – 3500 INR or 50 USD」を選択。

最後の質問、「7.Please write here if your requirement is not listed above」は入力必須ではないが、筆者の場合はBAPI/RFCやODataを使いたいので、一応その旨を記入しておいた。

Professor's RSAの申し込みフォームよりその他の要件の入力

最後に、「送信」ボタンを押して申し込みは完了である。

Professor's RSAの申し込み完了

送信が完了すると、「なる早で24時間以内に連絡する」という上記のメッセージが表示される。もしも連絡がない場合は、WhatsApp(英語圏で普及しているメッセンジャーサービス。日本でいうLINEのようなもの)経由で連絡しろとある。

これで申し込みは完了だ。
Professor’s RSA からの連絡を待つとしよう。

Welcomeメール到着

半日も経たないうちに、「Welcome to Professor’s RSA: SAP S/4HANA 2023 System Access」というタイトルのメールが送られてきた。

このメールには、デモ環境に接続するための説明ガイドへのリンクと、SAPシステムにログオンするためのユーザIDとパスワードが書かれていた。支払い方法へのリンクもある。

Professor's RSAより返されるメール

メールが来たので、一安心である。

しかし、後から気付いたのだが、筆者はここでミスを犯してしまった。
後日、じっくり検証したいと思っていたのと、「課金ありき」という思い込みから、デモ環境にすぐにログオンしなかったのである。

メールをよく読むと「The demo access is valid for 2 days.(デモアクセスは2日間有効)」とある。
つまり、2日間は無料の「お試し期間」があったのかもしれない。すぐにログオンしていれば、2日間で一通りの検証は無料でできたかもしれない。そう考えると、すぐにログオンしなかったのが悔やまれる。

結局、筆者がログオンを試みたのはメールを受け取ってから5日後だった。「デモアクセスの2日間」は過ぎてしまったので、課金しなければログオンできない状態になっているはずだ。

いざログオン①

SAP GUI でログオンしてみる

「デモアクセスの2日間」は過ぎていたが、ダメ元でログオンしてみることにした。
S/4HANAの「ログオン画面」が表示されれば、少なくともデモ環境のS/4HANAが実存することを確認できるからだ。

SAP GUI for Windows でログオンするため、自宅PCにインストール済みの SAP GUI for Windows をアップデートすることにする。
S4H 2023 System Access Guide のガイドに掲載されている SAP GUI for Windows のバージョンは 7.70 だったが、最新版は 8.00 なので、手持ちの 8.00 PatchLevel 15 (64ビット)をインストールした。

SAP GUI for Windows はデフォルトのままでは使いにくいので、以下の記事のとおり設定を変更してある。

S4H 2023 System Access Guide を見ながら、SAP GUI にS/4HANAに接続するための設定を行う。

SAP GUI for Windowsの設定

接続設定を終えたら、いざログオンだ。

ログオンできない(想定内)

メールに書かれていた ユーザIDとパスワードでログオンしてみたが、ログオンできなかった。
ユーザはロックされているようだ。

SAP GUI for Windowsよりログオンの試行

そりゃあそうだ。お金払ってないんだもん。

50 USD を支払えば、おそらくロックは解除され、ログオンできるようになるだろう。

さあ、ここからが本番だ。
勇気を出して課金タイムである。

支払い

支払い方法は3種類

上記のメールにあった Payment Links より、「1 Month」をクリックする。

Professor's RSAのPayment Links

支払い画面は日本語で表示された。日本向けにローカライズしているとは、なかなかグローバルなサービスのようだ。

Professor's RSAの支払い方法選択画面

よくあるクレジットカード払いだけかと思いきや「銀行」というのがある。銀行振り込みすれば「$5の還元」を受けられるようだ。
これは「銀行」を選ぶしかないだろう。

Professor's RSAの支払い方法選択画面より銀行の指定

「銀行」を選択したが、出てきたのは見慣れない銀行ばかり。
「銀行を検索」する欄があったので、三井住友や三菱UFJなど日本の銀行名を入力して検索したが、少しもヒットしなかった。
どうやら、指定できるのは米国の銀行だけのようである。残念。。。

クレジットカードで支払う

仕方ないので「カード」を選択し、「メールアドレス」とクレジットカードの情報を入力する。

Professor's RSAのカード支払い入力画面

このとき、メールアドレスは必須、かつ間違いなく入力する必要がある
支払ったユーザと、クレジットカードの情報を紐づける情報がメールアドレスのみだからだ。

そして、エエイ、「申し込む」ボタンをクリックだ!

Professor's RSAの支払い方法入力完了画面

あ~あ、$50支払っちゃたよ。
これでもう後戻りできない。

支払ったことをサポートに連絡する

$50没収されただけでは? 騙されてるんじゃないのか?
と、焦る気持ちを抑えつつ、再度ログオンを試みた。

しかし、ユーザはロックされたままでログオンできない。

どうやら、支払いとロック解除は自動で連携されておらず、担当者が手動で入金確認とロック解除を行うようだ。
これは想定の範囲内なので、サポート宛に支払い完了とロック解除の依頼をメールで送ることにした。

以下のメールを、professor@professorsoft.com 宛に送信した。

Dear Professor’s RSA

As the two-day demo access period had expired,
I have just completed a $50 payment by credit card.

I attempted to log on to the demo environment,
but my account remains locked.

Please unlock it once you have confirmed my payment.

My user account is as follows:

SAP Logon/Fiori Username: XXXX.XXXX(自分のユーザID)

Best regards,

XXXX(自分の名前)

ロック解除された!?

「このまま返信がないのでは?」とドキドキしたが、1時間ほどで返信があった。
マニュアル処理のサポートの応答時間とすれば、まずまず良い方だろう。

それが下のメールである。

Professor's RSAのサポートからの返信メール

アクセス権限が更新されたとある。ユーザロックが解除されたということだろうが、実際にログオンできるまでは安心できない。

いざログオン②

あらためてSAP GUI for Windows を立ち上げ、前回と同じユーザID/パスワードでログオンしてみると・・・

SAP GUI for WindowsでProfessor's RSAにログオンする

ログオン成功!!

インターネットを経由し、自宅PCの画面上に SAP S/4HANA のメニューが目の前に現れている。

おお ・・・・・

お金だけ払わされて騙されるのではないか!?という不安から解放されたこともあり、筆者にとっては極めて感動的な光景である。いつもの見慣れた SAP GUI メニューが、このときばかりは新鮮だ。

SAP GUI メニューを見る限り、日本語表示も問題なさそうだ。

しかし、単にログオンすることがゴールではない。
次は、どこまでの機能が利用できるのか、確認していくことにする。

ロール/権限は? まさかの・・・

「どこまでの利用を許されているのか」を確かめる手っ取り早い方法は、もちろん 権限 を確認することだ。

パスワードも変更したいので、ダメ元で T-CD: SU01(ユーザマスタ)を起動してみる。

T-CD:SU01開始

おや、SU01が起動できたぞ・・・
SU01はSAPシステムのユーザを作成・変更するトランザクションなので、特権ユーザしか使えないのが普通であるが、この環境ではSU01の使用を許可しているようだ。

SU01は登録済みのユーザを一覧できるので、F4キーを押下してユーザ一覧を表示させてみた。

T-CD:SU01でユーザ一覧を表示

ログオン中のクライアントには既に約1200人の先輩がいた。
これだけの利用者がいるなら、サービスとしての実績は大丈夫そうだ。

一方、SU01が使えるということは、新たなユーザIDを作成できるだけでなく、他のユーザのID変更・削除もできてしまうということになる。悪意を持ったユーザがいれば、筆者のユーザIDも改変されてしまうかもしれない。
悪意を持ったユーザいないことを祈るばかりだ。

取り急ぎ、パスワードを変更し、続いて権限プロファイルを確認するため「Profile」タブに移動する。
直後、思わず固まった。

SAP権限プロファイルの確認
まさかのSAP_ALL権限

そう、まさかの 神権限 である。

SPROもSE80もSE11もSE37もSE38も、あらゆるT-CODEを、S/4の全機能を使える!!

言い換えれば、他のユーザが設定したデータやカスタマイジング、SAP標準パラメータでさえも、全て自由に変更・破壊できてしまうということだ。

サンドボックス環境とはいえ、恐るべし Professor’s RSA。
攻めているのは価格だけではなかった・・・

マスタデータは?

FAA標準の豊富なデータ

S/4HANA FAAらしく、一通りの組織データ/マスタデータが登録済みである。
初手から業務プロセスを流せるため、学習効率が非常に高い。

T-CD: MM03 で品目マスタの件数をチェックしたところ、598件の品目が登録されていた。

品目マスタ一覧

SAP業界では、SAP標準以外のオブジェクトはZ命名で登録するというマナーがあるのだが、そんなことはお構い無しのユーザが多いようだ。

組織/マスタデータは一通り揃っているとはいえ、大人数が触り倒しているため、内容はグチャグチャになっている雰囲気がある。おそらく、FAAのマスタはほとんど原型をとどめていないだろう。

トランザクションを動かしてみる

データ登録はまったく問題なし

T-CD: MM01 を実行して品目マスタを登録できた。つまり、自分用のマスタは問題なく作成できる。

T-CD:MM01による品目マスタの登録

以下のトランザクションをざっと動かしてみたが、どれも問題なく利用できることが分かった。

  • SD:VA01
  • MM:ME21N, ME2L, MMBE
  • FI:FB50
  • CO:KE30
  • PP:MD01, MD01N, MD04, MD11, CO01, COOIS

月次処理/締め処理はできない?

会計期間を意識するような検証は、このサンドボックスでは困難と考えられる。
いわゆる月次処理や締め処理を行うFIやCOモジュールにとって、このサンドボックスは使い辛いと思う。

これらのモジュールでは、伝票に設定される「転記日」がきわめて重要だ。しかし、このサンドボックスでは、その基準となる「会計期間」を適切にコントロールできない。

たとえば、T-CD:MMPV(会計期間締め)は、在庫の入出庫ができる「会計期間の移動」を行うトランザクションであり、実行することで入出庫伝票の「転記可能な日付範囲」が決定される。
この範囲の移動はシステム全体へ与える影響が大きいため、運用ではルールを定め、代表者が周囲の了承を得たうえで実行するのが一般的である(大人数で操作する必要はない)。

ところが、このサンドボックス環境では誰でも MMPV を実行できてしまう。その結果、会計期間が無闇に変更される可能性があり、会計期間を前提とした検証は事実上不可能となってしまう。
FIやCOなどの会計系モジュールは、ロジスティクス以上に会計期間の影響を受けるので、Professor’s RSAのようなルール無用の環境は、その点は使い勝手がよくないと思われる。

つまり、FIやCOコンサルにとって、Professor’s RSA は$50/月の課金をするほどの価値はないかもしれない。

カスタマイジング(パラメータ設定)できる?

できる。
T-CD: SIMG または SPRO を起動してIMG画面を呼び出し、カスタマイジング=パラメータ設定も自由に行える

試しに「指図タイプ」の追加登録を行ったところ、問題なく登録できた。
このとき、移送依頼番号の取得を促されるので、自分用の番号を取得し、移送依頼を登録した。

カスタマイジングの移送依頼の登録


他の環境に移送する予定はないが(そもそもランドスケープ構成なのだろうか!?)、設定したパラメータをエクスポートできるようにするための配慮なのかもしれない。

カスタム開発オブジェクト

T-CD: SE37、SE38 を覗いてみたら、Z命名のABAP開発オブジェクトが多数保存されていた。
Professor’s RSA はカスタム開発環境としても活用されているようだ。

SE38
SE38の様子
SE37
SE37の様子

BAPI/RFCは呼び出せる?

BAPI/RFCは問題なく利用可能

筆者はBAPI/RFCを活用したカスタム開発/ソリューションを得意としているので、BAPI/RFCが外部アプリケーションから呼び出せるかどうかは非常に気になるポイントである。

便利ツールで公開中のExcelマクロツール「SAP品目マスタの項目一覧を表示するExcelマクロ」(下記の記事参照)を試したところ、正常に動いた。

さらに、MALSYの「BAPIインプットツール」によるデータ登録を試したところ、データは正常に登録され、SAPからのメッセージも正しく返ってきた。

MALSYによるBAPIの実行結果(BAPI_PLANNEDORDER_CREATE)

外部アプリケーションからのBAPI/RFC利用は問題ないようだ。

一方、同じMALSYでも、「バッチインプット・レコーダー」(T-CDの画面操作を記録する機能)や、「バッチインプット実行」によるデータ登録ではエラーが返ってきた。

MALSYによるバッチインプットのエラーメッセージ

この原因は不明なので、別の機会に調査しようと思う。

パフォーマンスは?

筆者の体感では、

Ke1G

普段使っているオンプレのS/4HANAとほぼ変わらないなぁ

であった。

パフォーマンスは、利用中のユーザ数や、実行中プロセスの数など、サーバの負荷状況によって変化する。
サーバへのアクセス状況を確認するため、T-CD: SM04でセッション状況をモニタしてみた。SM04を見ると、

T-CD:SM04によるセッションモニタリング
  • 全体セッション数:19
  • 自分と同じクライアントを利用中のユーザ数:筆者を含め3人
Ke1G

少な・・・どうりで軽いわけだ。

高負荷の検証はやっていないが、少なくとも「遅くて使えない」雰囲気はまったくない
この先、ユーザが増えればどうなるかわからないが、今のところパフォーマンスの問題はなさそうだ。

セキュリティは?

SAP_ALL 権限を与えられているユーザは筆者だけではないだろうから、セキュリティは無いに等しいと考えられる。

見知らぬユーザたちが共同利用する学習環境であるため、次の前提を置くのが鉄則だ。

  • 実データや機密情報を絶対に持ち込まない
  • 個人情報を登録しない
  • 成果物を残したければ自分で保存する

信頼性は?

1~2日ほど利用した範囲ではあるが、

  • システム障害なし
  • ダウンタイムなし
  • ログオンエラーなし

という状態であった。

What is Professor’s RSA?」の説明文には、「堅牢な HA(高可用性)および DR(災害復旧)構成に支えられており」と謳っているので、エンタープライズ級ではないにせよ、Azure が持つSLA 程度の可用性は確保されていると思われる。

What is Professor's RSAよりSLA

ただし、Professor’s RSA 側の都合で、サポートパッケージやSAP Note適用などのメンテナンスのため一時的にシステム停止することがあるかもしれない。

さらに、Professor’s RSA はインドの会社であり、その信用度や、組織としての持続性は不透明なので、サービスがある日突然終了するかもしれない

こう考えると不安でしかないが、そういうものだと割り切ってしまえば、個人学習用途として十分使える。

サポート対応は?

利用開始時、サポートにユーザ・ロックの解除をメールで依頼したが、約1時間で対応してもらえた。
メールによるサポートの応答時間としては及第点だと思う。

また、サポート対応時の挙動を見る限り、「怪しい・危険」という印象はなかった。

いつか、パスワード・リセットなどを依頼するかもしれないが、そのときにサポートの実力がわかるだろう。

解約について

最後に、Prodesser’s RSAを解約(キャンセル)する際の方法に触れておこう。
なお、筆者はサービス利用開始したばかりなので実際に解約の手続きは行っていない。

上記のWelcomeメールには、Payment links の下に次のような記述があった。

Please notify us one week before Subscription expiry to avoid Auto-Renewal.
(自動更新を避けるため、サブスクリプションの有効期限の1週間前までにご連絡ください。)

「自動更新を避けるため」とある。裏返せば、キャンセル連絡をしない限り、サブスクは自動更新されるという意味である。

キャンセルの連絡先は明記されていないが、唯一の連絡先がサポートの professor@professorsoft.com なので、このアドレスにメールしてサービス解約を依頼することになる。

また、HPには「Refund Policy(返金ポリシー)」の記述もあった。

Frofessor's RASのRefound Policy

返金ポリシー
コース開始日/システムアクセス開始日前に、Professor’s Software Servicesがキャンセル通知を受領した場合、料金は発生しません。返金は3営業日以内に行われます。
システムアクセス後3日以内にProfessor’s Software Servicesがキャンセル通知を受領した場合、料金の50%をキャンセル料として請求します。返金は3営業日以内に行われます。
キャンセル通知がない場合、または3日以降に通知があった場合、キャンセル料として全額を請求します。
この期間中、講師またはサービス提供者が返金を決定する場合があります。Professor’s Software Servicesは、アクセス日から一定期間を経過しても返金請求の有効性を検討し、独自の裁量で返金を発行することがあります。

解約がメール連絡だけでうまくできるのか、このあたりの不安は残っている。

まとめ:$50/月でS/4HANAの“全部入り”を触れる

Professor’s RSAを実際に使ってみて、わかったことを総括する。

良かった点

  • S/4HANA 2023 が $50/月 の格安で手に入る
  • FAAなので組織/マスタデータが一通り揃っており、すぐにシナリオ実行可能
  • まさかの SAP_ALL 権限
  • BAPI/RFCも動作
  • パフォーマンスは問題なし
  • サポート対応も悪くない

注意点

  • 情報が少ないため「体験して確かめる」スタンスが必要
  • SAP_ALLゆえの「壊すリスク」は常にある
  • 組織/マスタデータは揃っているが、大人数で触っているためグチャグチャな状態
  • 自分が登録したパラメータ/データは、他人によっていつでも壊される状態
  • 会計期間オープン/クローズなど、月次処理/締め処理の検証はやり辛そう
  • 一部のRFC動作(RFC経由のバッチインプット)に制限あり
  • このサービスがいつまで続くのか不透明(不安)

総合評価

50ドル/月 で体を張る価値は十分あった

これが、筆者の偽らざる感想である。

当面は Professor’s RSA への課金を続け、SAP S/4HANAの学習用として使い倒すつもりだ。
今回はFioriまでは触っていないので、今後はFioriの検証も行いたい。

学習・開発・検証用途でS/4HANAを個人利用したい人にとって、Professor’s RSA は現実的かつ圧倒的に安価な選択肢である

「SAP 個人利用したい」「SAP 開発環境がほしい」「SAP サブスクで触り倒したい」
そんな人は、一度試す価値があるだろう。

$50ドル/月 で個人利用のSAP環境を手に入れるかどうかは、あなた次第だ。

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